2023年06月21日

帰っていく


母と義母の介護を通して
人と会う機会が増えた。

呼吸をするように絵を描いていたが

言葉は会話に費やされ
文章は生まれてこなかった。


人はいずれ死を迎え、体は分解される。
自我意識も消えていく。

絵を描くことから教わった
永遠とつながる感覚はどうなるのだろう。

生きている間に得た感覚とはいえ

生命の集合体のような宇宙意識は
生まれる前から在るはずだ。


私たちの心のうちには
『郷愁』としか呼べないものがある。

若いときには
ここではない何処かに行きたいと願う。

老いてからは
ここではないどこかに帰りたいと望む。


ゆっくりと、自己の死に帰っていく。
求めつつ、描き続けた

やはらかな夢の中に。


posted by gomi at 15:39|

2022年11月20日


98歳の誕生日を母は病院で迎えた。
転倒し骨の手術を乗り越えたところだ。


文学が好きだった母に、
子供のころからいろいろな作家を教わってきた。

横光利一から始まって、竹西寛子、山川方夫、須賀敦子、
さらには哲学者の池田晶子。

いずれも透明な美しい空間が広がっている。
母は、かけがえの無い友となった。


神谷美恵子のことを伝えたのは私からだったが、
『ケベースの絵馬』を繰り返し読んでいたことを知っている。

魂の話をしてきた。
母が作った父の墓石は平置きで、表面に何も刻まれていない。


目や耳が衰えるにつれ、
当然こういったことも話せなくなってきている。

しかし、むくんだ足をマッサージしていると
心が通じていることがわかる


透明な広い空間は、
絵で私が追い求めているものだ。


posted by gomi at 16:16|

2022年10月18日

アケビ


アケビ・小.jpg


posted by gomi at 12:53| スケッチ

2022年10月09日

シャインマスカット


マスカット・小.jpg


posted by gomi at 17:03| スケッチ

2022年09月16日

処方の可能性


小さな栗の実が落ちるようになり、
知らないキノコが次々と生えてくる。

先日、一枚の絵が私から離れて行った。
ニス引きは残っているものの、もう私の方を向いていてはくれない。


今年春、二枚ほど離れて行かない絵があった。
混乱の中
仮引きニスも引いてみたが、やはりそこに留まり続けている。

工程を増やしたことがいけなかったのかもしれない。
工程数を元に戻して、処方の用法を変えてみることにした。


工程内の仕事の性質が変わった。

わずかな変化のはずが、
ジェットコースターに乗ったように揺さぶられ続けた。


やがて「やりたかったこと」と「やれること」が重なる時が訪れた。
そして静かに私から離れて行った。

この処方にこんな可能性があるとは思わなかった。
これから
もっと自由になれるかもしれない。


posted by gomi at 12:48|