絵を描くことは手仕事なので
材料の取り扱いや仕事の段取りなど、冷静に臨む部分がある。
同時に、自然や大いなるものに
自分をゆだねていく感覚がある。
長い間絵を描き続けて、この「ゆだねる感覚」は
日常化してしまった。
何かを選ぶことは、
「すでに決まっているものを探す」感覚に近い。
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この感覚は十代の頃、光の体験として始まった。
ある初夏にトンネルを抜けだしたように、
あたりがキラキラと輝いて見えた。
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深い幸福感を伴っていたが不安もあった。
一つはこの体験が特異なものではないかという思い、
一つはこの幸福感を失いたくないという思いだった。
徐々にこの体験は特別なものではなく、
すべての人に起こりうることだと知った。
同じ幸福感は芸術を介して常に存在していることも知った。
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そして一冊の本に出合った。