子供のころから月に一回、講談社の分厚い美術全集を
父が持ち帰ってくれていた。
その中で高田博厚先生の作品写真は繰り返し眺めていた。
『ロマン・ロラン夫人像』『ラ・カテドラル』
ヘルマン・ヘッセの訳でも知られる片山敏彦と親友だったことも知り、
高田先生の著作は私の美術の教科書となった。
パリに滞在した時も、先生の指示通り
サント・シャペル、クリュニュー、モネの睡蓮から見て廻った。
先生の文章はどれも深いが、
ヘッセとロランの友情についての美しい文がある
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奥様が電話番号を教えてくださり、
鎌倉のアトリエを訪れるように言ってくださったことがある。
若かった私は臆して伺えなかった。
それでいて江ノ電の極楽寺駅を降り、西田幾多郎の家の脇を通り
坂の上の玄関に置かれた、
ロンダニーニのピエタを見つめていたことがある。
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現在、豊科近代美術館をはじめ、
高田先生の作品に触れる場所があることを幸せに思う。