Valencia での数年間は、
修業方法を見出しただけだった。
初期油彩画技法再現のきっかけをつかんだとしても、
これから
膨大な資料を読み込み、処方を実践し、
デッサンを重ねて、
夢見た自分の制作につなげていかなくてはならない。
構造のある色と線の重なりへ。
本当の修業はこれからだとわかった。
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一体何年かかるだろう。
注目している色彩論と顔料の選択の課題もある。
手仕事の修業であれば最低でも10年はかかる。
せめてその10年は生きさせてほしい。
Valencia のカテドラルの前で、水色の空を見上げて祈った。
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地中海は描けなかった。
光も色も溢れていたのに。
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生活はとっくに行き詰っていた。日本に帰るしかない。
1979年。絵を始めてから10年。
さらにゆっくりと進むしかないことを覚悟した。