ブリュッセルの王立美術館で
模写を始めた。
卒業制作のつもりだった。
Jan Gossaert と同時代と思われる、
作者不詳の絵を描き始めた。
描いている途中で美術館の修復家に声をかけられた。
「どこで習ったのか」と。
「美術館で絵を見て、修復レポートを読んだ」と答えた。
それ以降、親しく話をしてくれるようになった。
一般的に言われていることと、
私の考えとの違いについてどう思うかを尋ねた。
総て "possible" と答えてくれた。
*
家に来てくれというので訪ねると、
「描いた絵を見てほしい」と言われた。
「本当は絵描きになりたかった。
この絵を見て率直な感想を言ってほしい」
一部古典技法を採り入れた、
優しく愛らしい絵だった。
「私は好きだ」と言うと、
はにかんだような笑みを見せた。