眼がかすむようになり、
病院に行くと栄養失調だと言われた。
スペインでの労働許可をベルギーのものに変えるために、
ブリュッセルとマヨルカ島を行き来することが続いた。
まだEUになる前のことだった。
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ブリュッセルには大きな画材店がある。
原材料が手にはいる昔ながらの塗料店もあった。
仕事の材料入手には困らなくなった。
画材店の額縁部門に一人、感性の鋭い人がいた。
経験が豊富で、扱う素材の製品番号もすべて頭に入っている。
王立美術館での模写の額装を頼んだ。
装飾学校を出ている彼は、自ら塗装を施してくれた。
結局20年近い付き合いとなり、
深い信頼関係が生まれた。
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額装の確認のために、病院から電話をくれた。
その後、入院した彼には告げず私は帰国してしまう。
彼から教わったことは計り知れない。