公立の高校だったので、特別な教育理念はなかった。
美術を大切にしたかったので選択は音楽にした。
高校生の政治運動が盛んな頃だったが、
関心はすでに内側に向かっていた。
調べたいことが次々と出てくるので、毎日のように図書館に通った。
美術館も主に常設展を観に行った。
新宿の安い映画館にも通い、芝居も観た。
音楽は中野に「クラシック」というレコード喫茶があり、
入り口でリクエストを書いた。
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数学の大江先生がある日、階段の踊り場で
自分が何故クリスチャンになったかを話してくださった。
「五味君だったら分かってくれると思った」と、
人として向き合ってくださった。
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新聞部で一学年下だった井手君が
個展に来てくれるようになり、彼のもとに収まった絵もある。
魂の親密さは、時空を超えて変わらない。