絵の前に佇んだ人がいる。
絵は彼岸と此岸をつなぐのかもしれない。
多くの大切な人々が彼岸に旅立った。永遠の時の中に入っていった。
彼らのまなざしの先に、絵が在ったことがある。
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自然の中で絵を描いていると、自分が解体していくのがわかる。
自分も小さなエネルギーの集合体であり、絵もまたごく小さな渦巻だ。
「吾々には、自分の感覚に映じない要素が尚ほ澤山にある、
吾々は自分の知ってゐるより以上の大きなものを包含してゐる」
とマーテルリンクは言う。『死後は如何』
原題『La Mort』の同じ箇所の訳には
「無意識の部分、つまり宇宙の一部を構成している部分は、広大で
意識の領域をはるかに凌いでいる」
というのもある。『死後の存続』
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宮沢賢治の妹、トシの『自省録』に
「私は自分に力づけてくれたメーテルリンクの智慧を信ずる」
という文がある。
賢治とマーテルリンクの『宇宙意識』
絵は今も時の中に入った人々と重なり続けている。
風景の中で。星とともに。