母と義母の介護を通して
人と会う機会が増えた。
呼吸をするように絵を描いていたが
言葉は会話に費やされ
文章は生まれてこなかった。
*
人はいずれ死を迎え、体は分解される。
自我意識も消えていく。
絵を描くことから教わった
永遠とつながる感覚はどうなるのだろう。
生きている間に得た感覚とはいえ
生命の集合体のような宇宙意識は
生まれる前から在るはずだ。
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私たちの心のうちには
『郷愁』としか呼べないものがある。
若いときには
ここではない何処かに行きたいと願う。
老いてからは
ここではないどこかに帰りたいと望む。
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ゆっくりと、自己の死に帰っていく。
求めつつ、描き続けた
やはらかな夢の中に。