98歳の誕生日を母は病院で迎えた。
転倒し骨の手術を乗り越えたところだ。
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文学が好きだった母に、
子供のころからいろいろな作家を教わってきた。
横光利一から始まって、竹西寛子、山川方夫、須賀敦子、
さらには哲学者の池田晶子。
いずれも透明な美しい空間が広がっている。
母は、かけがえの無い友となった。
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神谷美恵子のことを伝えたのは私からだったが、
『ケベースの絵馬』を繰り返し読んでいたことを知っている。
魂の話をしてきた。
母が作った父の墓石は平置きで、表面に何も刻まれていない。
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目や耳が衰えるにつれ、
当然こういったことも話せなくなってきている。
しかし、むくんだ足をマッサージしていると
心が通じていることがわかる
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透明な広い空間は、
絵で私が追い求めているものだ。
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