2019年に入って体調を崩した。個展の予定を取り消して、
眼の手術も受けた。
幸い手術はうまくいって、光と色を取り戻した気がしている。
これからは静かに制作にうち込みたいという気持ちが強くなった。
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出版社に勤めていた父が言っていた
「本当にいい本は自費出版以外にはあり得ない」と。
私の個展は企画画廊や百貨店でやらせていただいても
作家主体の自費出版のようなものだった。
そして「絵が行き先を選ぶ」という実感を持つようになった。
絵が生まれた時、すでにその絵の行き先は決ま っているように思う。
求めてくださる方にとっては最初から「私の絵」なのだ。
そのことの全体が光に満ちている。
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最初の滞欧から戻って技法の勉強がひと区切りついたとき
「今まで勉強してきたことをまとめておきなさい」と父に言われた。
『絵画ノート』という小冊子を作った時、
喜んで編集をかって出てくれた。
絵は自分で描くものではないと思っている。
その人を通して生まれてくるものだと思う。
自分と父を通して生まれてくるのだろう。
『絵画ノート』の冒頭に“光とは精神に他ならない”とうたった。
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