2020年08月23日

地中海


理論が先行しがちだった制作に、
手が追い付いてきた。

手仕事の手順が体に入ってきた。


地中海の青い空と碧い海を画面に定着させたくて
色を塗り重ね続ける。

美しい小さな入り江を描いた時、
不思議な発色を得た。

画面の上で色が揺れる。

パルマ市のクリスマス展示で、優雅 (graceful) な女性が
『彼女の絵』にしてくれた。


それ以降、絵を通して
恵 (grace) 多き魂と、出会っていくことになる。

稀有な、静かな出会いが続いていく。

*

その絵の下絵となった水彩画は
今年96歳になる母の部屋に掛かっている。

「波と共に、水底の石が転がる音がする」
と彼女が言ってくれる。


posted by gomi at 06:03|

2020年07月13日

絵画ノート


『絵画ノート』は、
「いつか来る自分自身のために」と結んだ。

個人は普通の意味でのそれぞれではないと思う。
もっと大きなものの一部なのだと思う。

私が抱え込んだ課題は必ず誰かの課題にもなると思った。

このノートを作っている間も、
大きなものの存在に触れていることができた。


今、浅間山麓に住んで草木や鳥や虫たちに囲まれて暮らしている。

熊の爪痕がそこかしこにあって、
家の前をきつねがゆっくり歩いて行ったりする。

個を超えていく入口が広がっている。


ともかくも『絵画ノート』を仕上げ、
年季が明けた気分だった。

いよいよ本格的に制作に打ち込みたい。
朝から晩まで絵を描いていたい。

もう一度地中海の光を描くところから始めたかった。

どうせ貧乏をするならと、
マヨルカ島に向かった。


posted by gomi at 11:57|

2020年05月22日

透明水彩


色の重ねのために
透明水彩画を見直すことにした。

イギリスで見た透明水彩画は
フランスの不透明水彩画の仕事とは違っていた。

日本の水彩はフランスで学んだ画家たちによる
不透明水彩技法が主流だった。


Winsor&Newton の固形水彩絵具と焼き付けケースを揃えた。
嬉しくてうれしくて、いつまでも眺めていた。

西洋人の同級生が持っている舶来水彩絵具が欲しくてたまらくなった、
有島武郎の童話『一房の葡萄』を思いだした。


筆と紙も厳選すると、全く新しい世界が開けた。

色の塗り重ねは実に楽しく、
現場でのスケッチは透明水彩で行うことになった。

顔料や画材メーカーの選択は変遷したが、

色の重ねの不思議さには、
今もなお驚かされ続けている。


posted by gomi at 15:09|