2021年01月07日

キリエ・エレイソン


昨年末から100号の制作を始めている。

スケッチから小下絵を起こし、
地塗りをしてコンポジションを転写した。

木々に囲まれた仕事場での制作が続く。


ずっと世間というものを恐れてきた。
集団生活になじめないことは子供のころからわかっていた。

絵を始めてからも、
世を離れて静かに制作することを望んできた。

そのおかげか稀有な魂との出会いがあった。

ベルギーの森の傍らに移り住んでからも、
魅力的な人々に巡り合った。

世間に知られることよりも、
孤独な魂との邂逅こそ望ましいと思っている。


世の中は怖いものだという気持ちは、
常にあり続けた。

しかしその世の中で、生きていかざるを得ない。

内側に開かれた生活を求めながらも、
人の世の残酷さに加担している自分がいる。

我を憐れみ給え、
キリエ・エレイソン 

絵を描くことは祈ることだと知った。


posted by gomi at 15:26|

2021年02月12日

Marcel Pérès の音楽


メロヴィング期への関心が深まったころ、
Marcel Pérès の音楽に出遭った。


バロック以前の、音楽CDを聴き比べることから始まった。
Marcel Pérès 率いるところの Ensemble Organum は異彩を放っていた。

Alden Biesen の古城での古音楽祭に行き、
魂を奪われてしまった。

羊飼いの歌声、地中海の民謡、さらに東方の香りがする。
美術で知った普遍性が直接現れていた。

いわゆるソレム風のグレゴリオ聖歌しか知らなかった私にとっては、
衝撃的な体験だった。


グレゴリオ聖歌前後、典礼音楽やポリフォニー(多声音楽)
フランドル楽派

これら中世・ルネッサンスの音楽を、
マルセル・ペレスの導きによって体感していくことになった。


後に、彼は私に言う。
「自分も絵描きだったら、初期フランドル技法から入っただろう」

「音の重なり」と「色の重なり」
『光の重なり』


posted by gomi at 14:44|

2021年07月02日

貧者の寶


『青い鳥』の作者モーリス・マーテルリンクは、
『貧者の寶』のなかで
リュースブルックについて書いている。

近代のフランドル神秘家が、
中世のフランドル神秘家について述べていることになる。


マーテルリンクは、リュースブルック(片山敏彦訳では レイスブルク )
を理解する鍵として、
古代末期の異教的神秘家プロティヌスを引用する。

「悟性は光そのものを見、光の原理を見る」
「自分自身の光を見る」

「魂は、魂自身がまず美しくなっていなければ
美を見ることはできないだろう」


訳者 片山敏彦は、「『貧者の寶』をめぐって」の文中、

「西欧神秘主義の風土を私は学生時代に、マーテルリンクの
『貧者の寶』のフランス象徴主義的な
詩的表現のかたちを通じて初めて示された」

と記している。


プロティヌス、リュースブルック、マーテルリンク、
そして片山敏彦。 光の連なり。


posted by gomi at 12:07|

2021年08月31日

現世へ


精神世界を探求した神谷美恵子に
『生きがいについて』という著作がある。

「生きがいを感じる心」として
エミール・ヴェルハーレン の詩が載っている。

「すべてのもののなかにわたしは在る、
わたしをとりまき わたしにしみわたる すべてのなかに」
『よろこび』 ヴェルアーラン 神谷美恵子訳


新しい生きがいを精神の世界に見出す場合、
心の世界のくみかえが多少とも必然的におこるという。

彼女はそれを「変革体験」と名付ける。
「変革体験」は「神秘体験」であり、

「自然との融合体験」や「光の体験」でもある。
そして 現世 へともどってくる。

一般の人々とは多少とも異なった価値体系を採用する。
超現世的な心の世界で生きていく。

人類の一員となる。


マーテルリンク の『青い鳥』もまた
現世にもどる話だ。

青い鳥は最後に飛んで行ってしまう。
チルチルは「またつかまえてあげる」と言う。

遍歴による「変革体験」の結果、
チルチルが手にしたのは 幸せの見つけ方だ。


posted by gomi at 15:30|

2021年09月15日

2021年個展


夕霧mini.jpg
                夕霧             M100号

11月15日(月)〜 21日(日)
11:00AM 〜 6:00PM
会期中無休 最終日5時閉場

ギャルリー・コパンダール

〒104-0031 東京都中央区京橋 2-7-5 京二小林ビル1F
TEL.03-3538-1611 FAX.03-3538-1633


posted by gomi at 16:05|