Valencia は芸術の街だった。
美術館には15世紀バレンシアの初期油彩画がたくさんあった。
Patriarca 修道院美術館には
Dieric Bouts の「十字架降下」とともに Jan Gossaert の「この人を見よ」、
そして Ignacio Pinazo の「死せるキリスト」までもがあった。
様々な処方を試しては、美術館に通った。
稚拙に見えるバレンシア初期油彩画も勉強になった。
画面の作り方がよく分かったからだ。
El Greco も Caravaggio の絵もあった。
訪れる人もほとんどなく、専用の画学校みたいなものだった。
*
Alicante に住むドイツ人画家と知り合った。
無農薬の畑を作り、奥さんは糸を紡いで布を織っていた。
Hermann Hesse のことが話題になり、
「オメガ点」という出版社から出たスペイン語版のことも教えてくれた。
彼は、神秘体験をそのまま絵にしようとしていた。
それは私も試みたことがあったが、あまりにも難しかった。
山間に夕陽が沈もうとしていた。機にかかった布が染まる。
「ここは Hesse が最後に住んだところに似ている」
と彼は言って、微笑んだ。