2021年09月06日

2021年08月31日

現世へ


精神世界を探求した神谷美恵子に
『生きがいについて』という著作がある。

「生きがいを感じる心」として
エミール・ヴェルハーレン の詩が載っている。

「すべてのもののなかにわたしは在る、
わたしをとりまき わたしにしみわたる すべてのなかに」
『よろこび』 ヴェルアーラン 神谷美恵子訳


新しい生きがいを精神の世界に見出す場合、
心の世界のくみかえが多少とも必然的におこるという。

彼女はそれを「変革体験」と名付ける。
「変革体験」は「神秘体験」であり、

「自然との融合体験」や「光の体験」でもある。
そして 現世 へともどってくる。

一般の人々とは多少とも異なった価値体系を採用する。
超現世的な心の世界で生きていく。

人類の一員となる。


マーテルリンク の『青い鳥』もまた
現世にもどる話だ。

青い鳥は最後に飛んで行ってしまう。
チルチルは「またつかまえてあげる」と言う。

遍歴による「変革体験」の結果、
チルチルが手にしたのは 幸せの見つけ方だ。


posted by gomi at 15:30|

2021年08月28日

エミール・ヴェルハーレン


“ 森は一つの世界でありその生活は私の生活 ”
『森』
エミイル ヹルハアラン 高村光太郎訳

エミール・ヴェルハーレンは、フラマン(フランドル)を詠う。

高村光太郎は彼の直情性を
「フラマン土着人のケルメッス的性情」と呼んだ。

ケルメッスとは Kermesse(仏) で、村の大祭。
ブリューゲルやリューベンスの絵にも描かれる。

エミール・ヴェルハーレンの愛の詩集は、
智恵子夫人に読み聞かせるために訳されたという。


片山敏彦もまた
ヴェルハーレンを師と仰ぎ

生の歓喜と明るさを「汎神論的恍惚」と称した。
『フランドルの詩人の姿に』


Kermesse(仏)は オランダ語で Kermis
語源は kerk 「教会」mis 「ミサ」ということのようだが、

ブリューゲルの『農民の踊り』やリューベンスの『ケルメス』では
盛大な酒宴に見える。
ケルトやゲルマンの熱情なのだろうか。

「汎神論的恍惚」は、
日本の祭りにもある。


posted by gomi at 10:16|

2021年08月18日

詩人の生地


ゲルマン人にもキリスト教は伝わっていた。
フランク王はローマのカトリックを受け入れたという。

6世紀、トゥールの司教グレゴリウスの『フランク史』に、

「森や泉や鳥や獣やその他のものから偶像を作り、
それらを神として崇拝し、またそれに犠牲を捧げる習慣であった」とある。
(東海大学古典叢書)

ゲルマンの汎神性は残り続けたのだろうか。


7世紀、ケルト系のキリスト教が入ってくる。

アイルランド修道士の影響を受けた 聖アマン(St. Amands)が、
スヘルデ川を遡上しながら修道院を開いていく。

汎神性のゲルマンとケルト。
その混成地帯に重なるキリスト教。


スヘルデ川を描きたいと思って、アントワープとゲントの間の街
St. Amands に友人と出かけて行った。

川が大きく湾曲した船着き場で、
我を忘れてスケッチをした。

描き疲れて川岸を少し歩くと、銅像が立っている。
銘板を見ると、

Emile Verhaeren エミール・ヴェルハーレン
高村光太郎が愛し訳した詩人は、St. Amands の生まれだった。


posted by gomi at 15:31|

2021年08月03日

トゥルネー


5世紀、ライン河畔にいたゲルマン人の統合が進み
緑の谷 近くから、スヘルデ川沿いのトゥルネーに拠点を移した。

この地域はベルガエ族の頃からゲルマンとのつながりが深かった。
フランク王国メロヴィング期が始まる。

トゥルネーの考古博物館に行くと、フランク王国の工芸品が見られる。
ガーネットや赤色ガラスが嵌め込まれたブローチ・留め金具。

メロヴィング期の美術品は、東方の香りがして力強い。
七宝や、ステンドグラス。初期油彩画などの透過する光に受け継がれる。

フランク王国は拡大し、都はパリに移る。


15世紀のトゥルネーに、Rogier van der Weyden が生まれる。
この地を訪れる時、Weyden に会いに行くような気がした。

フランスとの国境に近いスヘルデ川支流域は今も亜麻の産地で、
絵画用の亜麻仁油や亜麻布を生産している。

ロマネスクとゴチックが混在するトゥルネー大聖堂に
14世紀のミサ曲が残る。Jan van Ruusbroec が生きた頃の音楽だ。

楽曲形式は様々だが
Ensemble Organum の演奏には深い静けさが宿る。

フランドル初期油彩画の至宝 
Rogier van der Weyden の絵も、ダイナミックでありながら静かだ。


posted by gomi at 12:36|